「蒸留(Distillation、知識蒸留)」自体は、AI研究で昔から使われている正当な技術です。問題になっているのは、他社の非公開AIを無断で利用して蒸留することです。

イメージすると次のような流れです。
アメリカの高性能AI(GPTやClaudeなど)に大量の質問をする。
返ってきた回答や推論結果を大量に保存する。
そのデータを教師データとして、中国企業のAIを学習させる。
結果として、小さくて安価なモデルでも元のAIに近い能力を持つようになる。

例えば、人間に例えると、
GPT-5のようなAIが「東大教授」
中国企業のAIが「学生」
だとすると、本来は学生が何年も勉強する必要があります。しかし、教授に何百万回も質問し、その回答だけを教材として学習すると、短期間でかなり近い知識を身につけられます。

最近、OpenAIやAnthropicは、中国企業がこのような方法で自社モデルの能力を取り込もうとしていると主張しています。特にAnthropicは、大量の不正アカウントを使って自社モデルの能力が抽出されたと訴えています。一方、中国側はこうした主張を否定しており、事実関係には争いがあります。

つまり、
蒸留そのものは合法で一般的な技術
許可なく他社の閉鎖型AIを大量利用して蒸留することが問題視されている
米中AI競争の重要な争点の一つになっている
というのが現在の状況です。