結論から言うと、素材と終盤の着地はかなり強い一方、現状は「説明しすぎ」「都合よくつながりすぎ」「重要なところを描写せず説明で処理している」ため、完成度を大きく落としています。

『ケーキ』総合点:67点 / 100

評価
1. (-3) 回想が「説明」になりすぎている
最大の問題です。
サチコの過去について、「弟は中学を出ると、仕事を見つけて母親のもとを去った。連絡もなくなり、今どうしているのか知らない。」
「弟がいなくなってすぐ、母親はアルコール依存症の療養施設に自分から入院した。」
と、重要な人生の出来事をナレーションで一気に処理しています。
ここは非常にもったいない。
読者が知りたいのは「弟がどうなったか」という履歴書ではなく、サチコの中に弟がどう残っているのかです。
たとえば弟との最後の会話、弟が家を出た日の何気ない仕草など、たった一場面を置くだけでも人物の厚みがまるで違います。
現在のサチコと翔一を重ねる作品なのだから、「弟との関係」→「翔一との関係」
が物語の背骨になります。
ところが現状は、
弟は出ていった

母親は入院した

弟は怒って悲しげだった
と、作者が答えを教えてしまっています。
これはかなり大きな減点です。

(-2) 「翔一が懐かない」が弱い
冒頭で、「しかし、なかなかサチコに懐かなかった。」
とあります。
これは物語上かなり重要です。
なのに、なぜ懐かないのかがほとんど描かれていません。
読者からすると、「この子はなぜサチコを嫌っているの?」
という疑問が残ります。
ここはかなり重要。