>>708

第2 判断
1 そこで検討すると、岩波医師は、発達障害の分野に造詣の深い精神科医であるところ、事件記録や各種検査結果、被告人の小中学校時代の通知表など資料とし、被告人との面接のほか、父母との2回の面接を実施し、幼児期からのエピソードも十分に把握した上で、DSM-5の診断基準(以下、単に「診断基準」という)に照らし、被告人は、自閉スペクトラム症には該当しないとの結論を導いている。これに対し、田村医師は、幼児期からのエピソードについては、家族からの50分程度の電話による聞き取り調査を行った程度で、その把握が十分でないままに、断片的なエピソードから、自閉スペクトラム症の診断基準に該当するとの結論を導いている。したがって、この点については、岩波鑑定に信用性が認められる。もっとも、須藤教授も述べるとおり、被告人に認められる、複数のことが同時に処理できない、対人関係等の対応力に難がある、問題解決の視野が狭く自己中心的であるといった点は、自閉スペクトラム症を疑わせるものであり、被告人に自閉スペクトラム症の特性は認められる。