エピジェネティクスの後天的な変化には遺伝するものもある

研究グループは20匹の雄マウスを2つのグループに分け、10週間もの間、
一方には高脂肪食、そしてもう一方にはコントロールとして普通食を与えた。
その結果、高脂肪食の雄マウスの体脂肪は21%も増え、
精巣や精子のマイクロRNAにも変化が認められたという。

さらに、子ども世代の雌とコントロールの雄を交配させて、
生まれた孫世代にも同様の表現型が遺伝するかを調べた。

すると雌雄問わず子どもたちのすべてに部分的、
または全遺伝子表現型が遺伝していることが確認され、
特に雌の子どもは67%も肥満率が上昇。
しかも父マウスに糖尿病などの代謝疾患が確認されなかったにもかかわらず、
糖尿病の前兆であるインスリン抵抗性の上昇が認められたという。
また、雌の子どもが産んだ孫世代の雄も27%肥満が増加し、
高脂肪食を与えられて肥満となった父マウスの影響が、
2代にわたって伝達することが確認されたのだ。

この研究内容が掲載された『The FASEB Journal』の論文は、
子どもをつくるまでのたった2カ月半の食生活が、
生殖細胞の分子構造にまで影響を及ぼしたことを示唆している。
そしてこの遺伝子のスイッチはその後2代にわたって“遺伝”した。
DNAの塩基配列の変化を伴わずして、遺伝子のスイッチが変わる。
われわれが生活習慣、または生活環境を変えるだけでも、
エピジェネティクスには変化が現れていたのだ。

たった2カ月半の高脂肪食も、マウスを2代にわたって肥満体質にした。
では、われわれの経験は?
社会から疎外された強い孤独感、個人が感じるストレス、
善行による深い幸福感や満足感は、
われわれのエピゲノムに変化をもたらすのだろうか。