『最後のバス』1/2
夜も更け、霧が濃く立ち込める町はずれの古びたバス停に、一人のおばあさんが静かに腰を下ろしていた。
彼女はじっと動かず、遠くを見つめている。

そこへ、塾帰りの女子高生が通りかかった。薄暗がりの中に佇むおばあさんの姿が気になり、思わず声をかけた。

「おばあさん、バスを待ってるんですか?」

おばあさんはゆっくりと微笑んだ。

少女は首をかしげた。このバス停は、何年も前に廃止されたはずだった。
掲げられた時刻表もすっかり色褪せ、今はもう誰もここからバスに乗ることはない。

「バスはもう来ませんよ……」

そう言うと、おばあさんは懐かしそうに空を見上げ、再び微笑んだ。

「ここでね、最後の約束をしたの。あの人が、きっと戻ってくるって」

少女は言葉を失い、そっと耳を傾けた。